大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)118号 判決

本件審決にこれを取消すべき違法の点があるかどうかについて考える。

第二、第三引用例(成立について争いのない甲第四、五号証)に記載の、ゴムに配合する補強剤は、無機物、有機物を含めた充填物一般において、その粒子が細かいほど補強性が大きくなることは、一般的な技術常識であることについては、当事者間に争いがない。

しかして、第一引用例(成立について争いのない甲第三号証)には、本件発明でいう『「不溶性で不融性」の「アミノプラスト」』に包含される、メラミン―ホルムアルデヒド樹脂初期縮合物を熱重合して得た重合粉を加硫することによつて天然ゴムを強化することができる旨が記載されていることは、審決(成立について争いのない甲第一号証)のいうとおりであり、原告もこの点については特に争つていない。

原告は、アミノプラストのうち、メラミンホルムアルデヒド縮合物の中実球形粒子の場合、粒子寸法と比表面積との関係は、

A〔m2/g〕・d〔μ〕=K=4.13

A……比表面積

d……球状体の直径

の式で表わされる(この点については、当事者間に争いがない。)ところ、右の式に本件発明で使う粒子の平均粒子寸法五μを入れると比表面積は〇・八三m2/gとなるが、本件発明で使う粒子の比表面積は一〇m2/gより大であつて、球形粒子の一〇倍以上の大比表面積をもち、従つて本件発明に係る粒子は球形粒子とは異なつた複雑形状のものであつて、このような粒子はPH6ないし0の酸性という特殊な条件下で重合させることによつて得られ、第一引用例記載のものによつては得られないとの趣旨の主張をする。

しかしながら、本件発明の明細書(成立について争いのない甲第八号証―昭和四三年八月二七日付手続補正書)中の特許請求の範囲の項の記載によれば、本件発明においては、平均粒子の大きさと比表面積の関係については、比表面積が一〇m2/gより大で、平均粒子の大きさが五μより小という限定があるのみであるから、本件発明におけるアミノプラストが球形であつても、前記式により、比表面積を一〇m2/gにするためには粒子の直径を〇・四一三μにすればよいことは計数上明らかであるから、本件発明で用いる粒子は球形ではなく球形粒子の一〇倍以上の比表面積をもつ複雑形状のものであるということはできないはずであるのみならず、そもそも本件発明に係るアミノプラストが、原告が主張するような複雑形状のものであること及びそれがPH6ないし0の酸性という特殊な条件下で重合されたものであるという限定は、本件発明の特許請求の範囲においてなんら記載されていないところである。原告の主張は理由がない。

以上のとおりであり、本件発明において、アミノプラストを、比表面積が一〇m2/gより大で、平均粒子の大きさが五μより小さいものに限定した点に特に臨界的意義は認められないとして、結局、本件発明は第一引用例の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたものと認めた審決には違法の点はないから、その取消を求める原告の請求を棄却する。

〔編註〕 本件における発明の要旨および審決理由の要点は左のとおりである。

本件発明の要旨

比表面積が一〇m2/gより大で、平均粒子の大きさが5μより小さい不溶性で不融性の微細に分割されたアミノプラストの存在の下でこれらの粒子強化剤を実質的に無水の天然ゴムまたは合成ゴムに加えて加硫することから成る、淡色の加硫ゴムの製法。

本件審決の理由の要点

本件発明の要旨は、前項のとおりである。

これに対して、「日本ゴム協会誌」昭和三二年一一月号(社団法人 日本ゴム協会発行)(以下「第一引用例」という。)第八三五~八三六頁には、天然ゴムに対して、メラミン―ホルムアルデヒド樹脂初期縮合物を熱重合してえた重合粉を加えて加硫することによつて天然ゴムを強化することができる旨記載されている。そして、第一引用例第八二八頁の記載によれば、上記重合粉は、不溶、不融性のものであると解することができる。

そこで、本件発明と、第一引用例の記載とを比較検討すると、両者とも、ゴムの補強のために、不溶、不融性のアミノプラストを配合するという点で一致し、本件発明では、アミノプラストの比表面積を一〇m2/gより大で、平均粒子の大きさが五μより小さいものに限定しているのに対し、第一引用例記載のものは、比表面積及び平均粒子の大きさについて何も特定していない点でのみ相違する。

しかしながら、「ゴムと合成樹脂」(日本化学会編、井本稔、山田準吉共著)第六四~七〇頁特に第六五頁(以下「第二引用例」という。)、及び「ゴム工業」(波田強一著)第二九三頁(以下「第三引用例」という。)には、ゴムに配合する補強剤は、その粒子が細かいほど補強性が大きくなることが記載されている。そして、この記載は、無機充填物のみならず、有機充填物をも含めた充填物一般についてのものと解されるし、本件明細書の記載を検討しても、アミノプラストを「比表面積が一〇m2/gより大で、平均粒子の大きさが五μより小さいもの」に限定した点に、特に臨界的意義は認められないから、結局、上記限定はできるだけ微粒子のものを配合するという技術を、単に数値的に限定したにすぎないものというほかはない。

従つて、本件発明は、上記第一引用例の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第二九条第二項の規定に該当し、特許を受けることができない。

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